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慶應義塾高校優勝! 全国高校野球選手権大会決勝戦観戦記
                                             
 駒形知之(平成元年文学部卒)



<熱気は羽田空港から>
 2023年8月23日、羽田空港第2ターミナル。
 普段ならビジネス客で落ち着いた雰囲気の大坂伊丹空港行きの搭乗ゲートは、いつもとは明らかに違う熱気に包まれていました。 ペンマークの入ったシャツを着た人、幼稚舎の制服姿の小学生、赤青のメガホンを持った学生。午前10時発のANA019便は、まるで「慶應フライト」のようです。 前日の午前中、甲子園球場で開催される全国高校野球選手権大会決勝戦のチケットが発売されるまでは十分な空席のあったこの便は、その日の夜には満席となり、水曜日としては異例の満席便となって大坂伊丹空港へ向かうのでした。
<3塁側はオール応援席状態に>
  試合前日、8月22日。午前10時に発売となった入場券を購入しようと発売サイトに接続をしますが、アクセスが多すぎて全く繋がりません。30分後、やっと繋がったところで3塁側内野席を入手することができました。 内野席だと応援はできないかな・・・と思いつつ甲子園球場に入場し、自分の席に座ると、なんと周囲のほとんどの人が赤青のメガホンを持っているではありませんか。そして、遠く外野席を見れば、やはり多くの人がメガホンを持っている様子です。
 程なく、両校の選手が整列して礼、試合が始まりましたが、開始と共に奏でられた「若き血」を、バックスクリーン左から内野席まで、およそ3塁側の観客のほとんどが歌っています。甲子園のほぼ半分が応援席になったかのようで、その声量たるやまさに地鳴りのようです。
<丸田選手の先頭打者ホームランで熱気は最高潮に>
 1回表、先頭打者はセンター・丸田君。左打席に入って5球目、鋭いスイングから放たれた打球は、普段の浜風(左打者には不利な、ライトから3塁方向への風)とは逆の風に乗ってぐんぐん伸び、なんとライトスタンドに飛び込む先頭打者ホームランに。 試合開始の「若き血」から切れることなく歌われる得点時の「若き血」、3塁側の観客が内野席から外野席まで、今度は立ち上がり肩を組んでの斉唱です。応援歌はその後「烈火」から「疾風」へ、この時点で熱気は最高潮に。この回さらに1点、2回にも1点を追加して3−0となり、慶應義塾高校が試合の主導権を握ります。
<守り切った鈴木投手>
 しかし、相手は前年の優勝校、史上初めて真紅の大優勝旗を「白河越え」させた強豪・仙台育英高校です。2回裏に1点、3回裏に1点を返し、3回終了時点でスコアは3−2になり、少し嫌な雰囲気になります。 そして4回裏、仙台育英の先頭打者・尾形選手に2塁打を打たれて一打同点のピンチを招いてしまいます。しかし、先発の鈴木佳門投手は落ち着いたもの、後続の打者を三振に取り、追加点を許しません。 この時点では鈴木投手のボールも走っていたので、沖縄尚学高校戦のように、5回終了まで先発の鈴木投手で引っ張り、クーリングタイムの後に継投にするのかな、と思っていましたが・・・。
<5回、一気のビッグイニング>
 5回、先に動いたのが仙台育英高校です。先発の湯田投手からエースナンバー1をつけた高橋投手に継投してきます。そこに対するのがこの試合4番に入った延末選手。ゴーグルがトレードマークの選手です。「若き血」の流れる中、延末選手は内野安打で出塁します。しかしながら加藤選手、渡辺千之亮選手は倒れてしまい二死になり、この回は得点ならずか・・・と思ったところに6番・福井選手はレフトに強烈な打球を放ちます。この二塁打で延末選手が生還して4−2になります。次打者は主将・大村選手です。小柄ながらガッツあふれるプレイが持ち味の大村選手は四球を選び、1・2塁に。次は鈴木投手の打順ですが、代打の切り札・安達選手が投入されます。応援歌は「突撃のテーマ」から「ダッシュ慶應」へ、球場全体が揺れているかのようです。 安達選手は期待に応え、レフト前にタイムリーヒットを放って延末選手が生還、5−2と点差を広げます。そして次打者・丸田選手の放った打球は左中間に上がりますが、選手が交錯して落球、さらに2点を追加して7−2に。続く八木選手もライトにタイムリーヒットを放って8−2、この回5点のビッグイニングです。
<小宅投手のナイスピッチング>
 鈴木投手に代打が出たことから、5回裏からエース・小宅投手が登板します。前戦の準決勝・土浦日大高校戦で完封していることからどうかな、と思いましたが、疲れを全く感じさせない素晴らしい投球を見せます。強打の仙台育英打線を相手に、5回から8回までの4イニングを散発の3安打無得点に抑えます。一方で慶應打線も仙台育英の高橋、田中両投手に要所を締められ、得点を上げることはできません。
<ゲームセット、そして塾歌>
 そして試合はいよいよ大詰め、9回裏に。マウンドには小宅投手が上がります。先頭打者をヒットで出してしまい、無死2塁となります。次の打者には再三ファウルに粘られますが、最後は三振に打ち取ります。次の代打はライトフライに打ち取り二死に、打席には好打者・橋本航河選手を迎えます。橋本選手の放った打球は慶應応援団の見守るレフトファウルグランドへ、それを渡辺選手がしっかり捕ってゲームセット、3時間近くに及ぶ熱戦を制して慶應義塾高校が107年ぶりの選手権大会優勝を果たしました! 両校の例の後、塾旗の掲揚と塾歌の斉唱です。本塁前に並んだ選手の顔はやり遂げた満足感に溢れていて、晴れやかに塾歌を歌います。その後の大会閉会式まで、多くの塾生、塾員が残り、優勝の余韻を味わいました。
  思えば5年前の2018年、生井、渡部両左腕を擁して出場した選抜大会は、後に慶應義塾大学に入学してエースとなる増居投手を要する彦根東高校に初戦敗退、選手権大会は初戦の中越高校戦に宮尾選手のサヨナラヒットで勝利するものの、高知商業高校戦に敗退。5年の時を経て2023年の選抜大会、今回の決勝戦の対戦相手となった仙台育英高校戦は、タイブレイクに持ち込むもののこれも初戦敗退と、日吉の練習場に掲げられた「KEIO日本一」のスローガンはいつ達成されるのだろうと思っていましたが、ついにこうして現実のものとなりました。
 残念ながら秋季大会では桐光学園高校に敗れて選抜大会出場の可能性は無くなりましたが、来年の選手権大会の出場、さらには連覇に向けて前に進む慶應義塾高校野球部を、これからも応援していきたいと思います。
 
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